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誰も語らないほんとうの事業承継

誰も語らないほんとうの事業承継―子供に継がせたかったけど…。誰も語らないほんとうの事業承継―子供に継がせたかったけど…。
瀧本 泰行

幻冬舎メディアコンサルティング 2008-09


瀧本 泰行さんの「誰も語らないほんとうの事業承継」です。
瀧本さんは、エアーリンクを創業し、社員100名以上、売上高100億円以上の会社にまで育て上げた経営者です。
現在は、すでに引退されていますが、滝本さんが引退するに当たり、誰に会社を継がせるかに悩み、実際に次の経営者に引き継ぐまでの過程が書かれています。


創業者が誰かに会社を引き継がせると言うのはどういうことか、そのための心構えはどうしたら良いかに始まり、いつまでも自分で経営していたいのはわかるが、判断のスピードや体力の衰えなどもあるので、社長と言うのは、会社を発展させて行くとともに、次の社長をいかに育てるかが重要な役割でしょう。

みなさんもご存知と思いますが、見事な引き際の例として、ホンダの本田宗一郎さん、藤沢武夫さんのお2人の話が載っています。
私はこのお2人の引き際を実際に見たわけではないですが、その後、本で読んだときには、素晴らしいと思いました。
逆に考えると、良い例がそれほど出てこないと言うことは、引き際がそれだけ難しいことを示していると思います。


普通の中小企業では、子供をはじめ、身内に継がせるケースが多いですが、この本では、その弊害などにも言及し、会社が「社会の公器」であることを考えることよって、最適な後継者が誰であるのかを選択すべきと言う立場を取っています。
子供に継がせることがいかに難しいかについては、子供に継ぐ意思や能力がない場合や、親との価値観の違いなど、多くのページ数を割いて説明しています。

瀧本さんも当初は息子さんに会社を継がせたいと考え、他社で働いていた息子さんをエアーリンクに呼び寄せますが、親子と言う立場が逆に甘えなどを呼び、仕事上だけでなく、家族としての関係も悪化、息子さんは会社を去ってしまいます。
ここでは、瀧本さん、息子さん双方に言い分があり、うまく身内に継がせる難しさがわかります。


結局滝本さんは、当初思っていた息子さんに会社を継がせるということはせず、M&Aで他社に売却するという道を選択しました。
M&Aは必ずしも悪ではないとし、日本のM&Aは、アメリカのM&Aとは違うということを訴えています。

個人経営の中小企業では、今もまだ子供や身内に継がせるケースが依然多く、瀧本さんの場合も、M&Aで事業を売却したと言う話をすると、ネット上で「倒産」と言った噂が流れたようで、かなりショックを受けたと話しています。
ただ、今後は時代の流れに従って、いずれ変わっていくだろうと言っています。
また、この本では、M&Aを現時点では最強の切り札とも書いています。


会社を譲渡するときには、会社の健康状態を知っておく必要があり、特にM&Aでは、デューデリジェンス(企業に対する調査活動)があるので、そのときに、会社の実態がわかっていないと、破談になるケースがあるそうですが、エアーリンクでは、毎年数百万円のお金をかけて大手監査法人に会計監査をしてもらっていたそうです。
会社の規模にもよるので、毎年数百万かけてまでやるかは別として、自分の会社の状態、特に財務体質などについては、しっかり把握しておく必要があるでしょう。
中小企業のオーナー社長だと、自分の会社の状態を知らない人もいますので、この点は普段から意識しておくべきでしょう。


本の最後は、瀧本さんと息子さん、そして瀧本さんとともにエアーリンクを創業から支えた奥さんの3人の対談となっています。


■読みメモ

必要なのは「改善」ではなく、「改革」だった。エアーリンクの改革を成功させることができるのは、私や妻の世代ではなく、インターネットをよく知る若い世代の経営者ではないか。

どんな名経営者であっても、経営能力の衰えは避けられない。問題は、経営者自身がその衰えになかなか気づかない、あるいは薄々は感じていても衰えを認めない、という点だろう。

●こんな経営者は危ない
・時代の変化を無視して過去の成功体験に頼ってしまう経営者
・事業の拡大ではなく、資金繰りが主な仕事になっている経営者
・事業の将来を予測できなくなった経営者
・「周りがやっているからやろう」という付和雷同型の思考に陥ってしまった経営者
・過去の栄光にしがみついて「見栄を張る経営者」
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親が経営する会社の魅力や仕事のやりがいなどが、子供が事業を承継する場合の有力な要因となってきている。

息子との確執のなかで私が痛切に感じたのは、50代(私)と20代(息子)との価値観のギャップ。

相手が息子の場合は感情面のつながりがあるので、議論になるとまったく加減がきかなくなる。
お互い会社を良くしようと思って意見を言っているのだが、親子であるため遠慮がなくなってしまい、相手を叩きのめすくらいの勢いの言い争いになる。

まず、「後継者ありき」という発想は、すっぱりと捨てよう。
「ちょっと頼りないのない息子だが、経営者になればシャンとするだろう」などと考えてはいけない。それは考え方の順番がおかしいのであって、シャンとしてから経営者になってもらわないと困る。

●後継者に相応しい5つの資質
1.経営理念をよく理解しているか
2.己をよくわかっているか
3.会社のことをわかっているか
4.会社のリスクマネジメントがわかっているか
5.人とつきあえるか、人に愛されるか
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年齢とは関係なしに、変換期には「やりたい!」と前向きの姿勢を持っている人でないと、経営は託せない。

M&Aを申し入れてくる企業と、その「本気度」を比べてみるといい。
「継ぎますよ」と答えた子供にむかって、「じゃあ、自分の金を出して、この会社を買ってくれるか?」と質問してみる。
この問いは、後継者としての資格をはかる、いわば、リトマス試験紙である。

何よりも「会社の成長をいちばんに考える」

●MBOのメリット(※Management Buy-out:厳密に言えば、経営者による買収であり、M&Aの1つであるが、日本の中小企業で行われる場合は「暖簾分け」的な色彩が濃い)
1.企業文化をそのまま保持できる
2.従業員の抵抗感が少ない・取引先の理解が得やすい
3.買収資金の調達がしやすい

●MBOのデメリット
1.会社の体質が変わらない
2.新しい経営者が個人保証を求められる

MBOなど、従業員承継の場合、あまり細かい口出しをせずに、自分のまわりの人が勝手に育つようにしむけることが大事。

●M&Aのメリット
売り手側
1.後継者対策となり、会社が存続する
2.事業の発展、企業体質の強化ができる
3.経営者の手取り額が大きくなる

買い手側
1.既存事業拡大や事業多角化ができる
2.新規事業の立ち上げまでの時間短縮ができる
3.投資コスト・事業コストが相対的に少ない

●M&Aのデメリット
1.「子供に事業承継ができなかった」という後悔を引きずる
2.「世間の目」
3.「会社文化の齟齬」

M&Aに失敗する多くの企業は価格評価に納得がいかず、タイミングを逃してしまう。

デューデリジェンスでは、定量分析(簿外債務を含む財務状況の把握)と定性分析(社内の人間関係や業界内での評価)があるが、仲介業者は定性分析を端折って譲渡価格を提示する可能性が高いため、経営者は事前に定性分析の結果を把握しておかなければならない。

経営者はM&Aに際して孤独な闘いを強いられる。

●M&Aでの注意
1.利害関係者には相談しない
2.デューデリの際は、社員に感づかれないように十分注意する
3.ステークホルダーの人たちにはきちんとケアをして譲渡する


■こんな人におすすめ

会社の後継者を誰にしようか考えている社長

親の会社を引き継ぐかどうか迷っている2代目、3代目

後継者が見つからず、事業を畳もうとしている社長

M&Aを検討している中小企業の社長

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